ギターのタッピング奏法で有名なギタリスト選集(アコギ・曲など)

タッピング奏法とは?

ギターは通常、左手で弦を押さえ、右手で弦を弾く事で音を出します。

「タッピング奏法」は、主に右手の動きが通常の奏法と異なります。

右手で弦を叩く(タッピング)する事で音を出します。

ただそれだけの違いですが、それにより、ギター一本から生み出される音の数は倍増し、いわゆる「一人オーケストラ」ともいえるような、幅広く豊かな表現が可能になります。

また、多くの場合、ギターに変則チューニングが施されています。

タッピング奏法では開放弦を多様するためです。

タッピング奏法に付随する技術として、叩いてハーモニクス(倍音)を出す技法や、左手でも弦を叩く(タッピング)技法などがあります。

ライトハンド奏法との違い

ギターをプレイした経験がある人なら、一度はヴァン・ヘイレンを真似て右手でハンマリングをして「なんちゃって早弾き」をした事があるのではないでしょうか?

しかし、あれは「タッピング奏法」というよりは「ライトハンド奏法」です。

私は「タッピング奏法」と「ライトハンド奏法」を明確に区別しています。

「ライトハンド奏法」はあくまでパフォーマンスに幅を持たせるための飛び道具だと考えています。

「ライトハンド奏法」の場合は、右手でハンマリングを補助する程度に留まり、叩いて音を出したりする、打楽器的要素は少ないです。

対して「タッピング奏法」は両手で弾くことを主としており、パフォーマンスに幅を持たせるというよりは、右手で弾くこと自体が表現の中核を担います。

「タッピング奏法」はギターをまるで打楽器のように扱います。

つまり、打楽器的要素が少ないものを「ライトハンド奏法」、より打楽器的要素が強いものを「タッピング奏法」と呼んで差し支えないでしょう。

タッピング奏法を習得すればギタリストとして一段階上にいける

つまるところ、「タッピング奏法」こそがマンネリ化した「ギターの音」を一段階上の次元に押し上げるキーワードです。

いわば、左手で弦を押さえて右手でピッキングする従来のスタイルは、人間の脳でいうと、左脳しか使っていない状態です。

「タッピング奏法」ではこれまで片手で弾いていたものを両手で弾くのですから、単純計算でいうと2倍の出力です。

左脳と右脳をフル回転する状態ですから、ややもすればその効果は2倍以上かもしれません。

タッピング奏法を既に実践しているギタリストならうなづくかもしれませんが、タッピング奏法に覚醒した瞬間、自身の音楽的能力がぐんとレベルアップするのを実感します。

それは束縛していたものが取り払われ、身体が軽くなり、3mぐらい宙に浮いたような感じです。

「ギターの音」に飽きた人はタッピング奏法で新しい音を探してみては?

従来の奏法による「ギターの音」はもはや研究され尽くしていますが、「タッピング奏法」はまだまだ研究途上です。

「タッピング奏法」の地平にはまだまだ発見されていない「新しい音」がザクザク眠っています。

これまで「ギターの音」に飽きた人や、自身のアイデンティティーに行き詰った人のほとんどはエフェクトやノイズに逃げていましたが、それももはや頭打ちです。

今後、ギターの可能性を模索するには、MAX/MSPなどのソフトウェアを駆使した「プロセッシング系」か、両手を駆使した「タッピング奏法」か、どちらかです。

この二者が今考えうる中では大きな可能性を秘めた分野ですが、この記事では「タッピング奏法」に焦点を当てたいと思います。

現時点で「タッピング奏法」は独学するしかない

後ほどご紹介するウスマン・リアスさんは、ネットで尊敬するギタリストの動画を見て独学でタッピング奏法を極めたそうです。

おそらく、タッピング奏法を学びたくても、巷のギタースクールにはタッピング奏法が出来る先生はほとんどいません。

それほど、現時点では少数派なのですが、だからこそ可能性がある分野でもあります。

これから、タッピング奏法に挑戦する人はぜひここで紹介するギタリスト達の動画を見て研究して、自分のスタイルを模索して欲しいと思います。

以下に、タッピング奏法に挑戦する上で、これまでに世の中に登場した、最低限知っておくべきギタリスト達を紹介します。

桃源郷系

マイケル・ヘッジス(Michael Hedges)

マイケル・ヘッジスは18歳の時組んでいたバンドのボーカルに教えてもらって、最初の出音を聴いた瞬間吹っ飛びました。

その時、聴いたのが『Dream Beach』です。

一番有名な曲は『Aerial Boundaries』(上の動画)です。

彼の音を「桃源郷」と呼ばずして、何と呼びましょうか!

彼の存在は、それまでの「ギターの音はこういうもんだ!」という固定観念をぶっ壊した点で革命的でした。

彼は素晴らしい演奏家であると同時に、すばらしい作曲家でもあります。

そもそも、それ以前に存在しなかったギターの演奏スタイルですから、自分で作曲するしかありませんでした。

最近のギタリストは自分で曲を作らない人が多いので、「彼を見習いなさい!」と言いたいです。

まあ、Youtubeで有名な曲の「ソロギターバージョン」をアップロードしてバズらせるという戦略的な部分もあるのでしょうが…

マイケル・ヘッジスの曲調は「響き」を中心としたニューエイジ系で、個人的にドンピシャなサウンドです。

生命力と情緒溢れるサウンドからはスピリチュアルなエネルギーが感じられます。

彼は「人はなぜ生きるのか?」「音楽とは何か?」という深い哲学的な思想で音楽を作っていたように思えます。

彼の演奏はタッピング奏法が中心ですが、『Dream Beach』のように、タッピングだけにこだわっているわけではないようです。

どちらかといえば、ギターの響きを楽しんでいるような感じです。

エリック・モングレイン(Erik Mongrain)

このパフォーマンスを見て、吹っ飛ばない人はいません。

ギター一本でここまで色彩豊かな世界観を出せる人はそうはいません。

いや、「そうはいない」というより、彼しかいません。

さらにグルーヴ感もあり、ついつい体が動いてしまいます。

最大の特徴は、その演奏フォームです。

普通、ギターを抱きかかえるようにして演奏するのが基本ですが、彼はひざの上においてギターを上から叩くようにして演奏します。

まるでピアノを弾くかのようにギターを弾く様はまさに「天才」という言葉が相応しいでしょう。

ハーモニクスを多用するあたり、完全にマイケル・ヘッジスの申し子といえますが、単なるパクリではなく、エリック・モングレイン独自の方向性を確立している点で、「進化」といえるでしょう。

テクニック、クリエイティビティ、ポピュラリティー、パフォーマンス、どれを取っても100%、完璧です。

オーガニック系

プレストン・リード(Preston Reed)

なぜか、日本においては驚くほど無名です。

「プレストン・リード」で検索するとトップに表示されるサイトには次のように書かれています。

その個性的なギター・プレイ故に、 アコースティック・ギター・ファンの反応は賛否別れている

http://www002.upp.so-net.ne.jp/n-1310/room/preston.html

ギターという楽器自体は超マジョリティーですが、タッピング奏法がこれまでいかにマイノリティーだったかが窺えます。

マイケル・ヘッジスがヒットしたのは、ギタリストとしてではなく、あくまでニューエイジ音楽として評価されたに過ぎません。

ただ、最近「タッピング奏法」はちょっとした流行になっており、アマチュアの間でも「タッピング奏法」に挑戦する人が増えている印象です。

それは後述するジャスティン・キングさんのヒットの影響が大きいです。

もしそうなら、今後、プレストン・リードさんは次世代のギタリスト達のお手本として、再評価されるに違いありません。

ウスマン・リアス

この動画は先ほど紹介したプレストン・リードさんとウスマン・リアスさんがTEDでコラボレーションした際の動画です。

ウスマン・リアスさんはYoutubeでタッピング奏法で演奏するギタリスト達の動画を見て独学で練習したと言います。

独学と聞くと、「すごい」と感じるでしょうが、しかし、それは当然といえば当然のことです。

おそらく、この記事で紹介している全てのギタリストが独学でタッピング奏法を身に付けたと思います。

冒頭でも書きましたが、タッピング奏法はまだまだマイノリティの領域であり、お手本が少ないです。

だからこそ、大きな可能性を秘めており、日進月歩、進化しています。

今日も世界のどこかでタッピング奏法による「新しい音」が生まれていることでしょう。

 

実は、ウスマン・リアスさんは、アニメ映画の監督でもあります。

幼少の頃より、ジブリ作品が好きで、将来はアニメ映画の制作に携わる事を夢見ていましたが、パキスタンにはアニメの制作スタジオがありませんでした。

そこで、彼は自分で会社を立ち上げ、クラウドファンディングにより6万2000ドルの資金を集めて最初の作品『Glassworker』の制作を成功させました。

その時既に、彼はギタリストとして有名だったので、彼のギターの腕前が芸術家としての彼の信用に直結し、資金を集める事ができたのは言うまでもありません。

映画にはもちろん音楽が必要ですが、彼はもちろん自分で音楽を作りました。

彼は今後、ギタリスト、アニメ映画の監督、映画音楽の作曲家として、クリエイティブで楽しい人生を歩んでゆくことでしょう。

メディアアート系

カーキ・キング(Kaki King)

この人を忘れてはいけません。

もともとドラマーだったカーキ・キングはギタリストに転身し、世に知られるようになりました。

テクニック的には最近のジャスティン・キングやエリック・モングレインなどと比べると、少し物足らないと感じる方もおられると思いますが、実はカーキ・キングさんは彼らよりずっと以前から活動しており、それを考慮すれば、テクニックなんて問題ありません。

彼女にとって、お手本はマイケル・ヘッジスぐらいしか居なかったわけで、だとするならば、手探りで試行錯誤しながら今の音楽性を確立したマインドは凄いです。

さらに、基本的に自作曲をメインにしており、高いクリエイティビティをもった芸術家だといえます。

彼女がもしマイケル・ヘッジスのカバーばかり演奏していたら、今のような地位は無かったでしょう。

作風は、マイケル・ヘッジスのような桃源郷系というよりは、プレストン・リードのようなオーガニック系の系譜に属すると言えます。

イギリスの音楽情報誌「ローリングストーン」で女性では初めて「ギターの神」に選ばれました。

カーキ・キングはローリング・ストーン誌で「ギターの神」に選ばれた初めての女性です。TED2008のステージで、ヒット作「Playing with Pink Noise」を含むフルセットの演奏の模様です。驚愕の芸術性と、突出したギターテクニックの出会いをお楽しみください。

TED

最近ではプロジェクション・マッピングを取り入れたパフォーマンスを展開しており、メディア・アート的な方向性に向かおうとしているのが伺えます。

筆者としては美術の領域に旅立とうとする姿勢に共感します。

したがい、験を担いで「メディア・アート系」と分類させていただきました。

また、映画音楽もいくつか制作しており、日本のテレビCMなどにも楽曲提供しています。

オスカー俳優でもあるショーン・ペンが監督した『イントゥ・ザ・ワイルド』ではがっつり劇伴を担当。

また、天才ギタリスト少年が両親を探す映画『奇跡のシンフォニー』では二曲の楽曲を提供しており、主人公の男の子がギターを演奏しているシーンでは、手で出演しています。

『奇跡のシンフォニー』についてはこの記事の最後に紹介します。

タッピング系ギタリストがたまに使ってるでっかいギターは何?

カーキ・キング

マイケル・ヘッジスなど、タッピング系ギタリストについて調べているとでかいギターを持った写真が出てきます。

このギターは「ハープギター」といって、ギターにハープの低音部分が付加されたギターです。

上の部分がハープになっており、低い音が出ます。

主にベースとして使います。

メロディアス系

アンディー・マッキー(Andy McKee)

この動画はかなり有名な動画なので見た事がある方も多いのではないでしょうか?

アンディー・マッキーさんはこの動画が当時のYoutubeのトップに取り上げられた事で、一躍有名になりました。

マイケル・ヘッジスやエリック・モングレインの場合、メロディーとリズムが複雑に絡まった一つの固まりとしてギターの響きを奏でるスタイルですが、アンディー・マッギーさんの場合はメロディーと伴奏を一人二役で演じるといったスタイルです。

トミー・エマニュエルさんや押尾コータローさんに近い感じです。

彼らとの違いはタッピング奏法を多用することで、リズムがより際立っている点でしょうか。

メロディーを口ずさめる曲が書けるという点で、日本でも人気です。

トビアス・ラウシャー(Tobias Rauscher)

1985年ドイツ生まれのギタリスト、筆者と同じ年です。

Youtubeを主な発信媒体として活動しており、オンラインサロンのギタースクールを運営するなど、ビジネス面でも成功しているようです。

自身が運営しているYoutubeの再生数も圧倒的ですね。

見習いたいものです。

彼のサウンドはメロディーと伴奏が明確に区別されていて、さらにメロディーがキャッチーです。

これらの特徴から、アンディー・マッキーの系譜にあるといえます。

彼は今とても勢いがあり、彼のオリジナル曲のカバーを演奏するアマチュアも多くいます。

メロディーがとてもキャッチーで、「みんなに愛される曲」を作ろうとしているのが伺えます。

ただ、このスタイルは10年前に出尽くしていて、一歩間違えれば宴会の余興になりかねないので、同年代のアーティストとして言わせてもらうと、「もう少し生みの苦しみが必要なのではないか?」といったところでしょうか。

同じ方向性では、よほどテクニックで上回らないと、アンディー・マッキーには勝てません。

「流し」に徹して、短期的にビジネスが成功しても、長期的に見れば最終的には自分の芸術を突き詰めた芸術家が勝つというのは世の常です。

ファンキー系

ジャスティン・キング(Justin King)

もう、Youtubeで演奏動画を上げているタッピング系ギタリストは猫も杓子も、『Phunkdified』を演奏しています。

この曲を書いたのは彼、ジャスティン・キングです。

個人的にはマイケル・ヘッジスのような桃源郷系やプレストンリードのようなオーガニック系が好きなので、こういうエンターテインメントな曲はあまり好きではありませんが、彼の演奏は素晴らしいです。

めちゃくちゃワイルドで男性的ですよね。

Youtubeのコメントで「○○さんの方が上手い」とかいうコメントがありますが、ほとんどのYoutuber達は彼と同じ弾き方をコピーしている時点で、彼の手の平の上なのかなと思います。

同じアレンジでオリジナルに勝った例は、音楽史を紐解いても皆無ですから。

エリック・ロシェ(Eric Roche)

日本では殆ど知られていませんが、1967年生まれ、ニューヨーク出身のギタリストです。

2005年に死去しています。

エリック・ロシェは作曲家というよりは演奏家で、多くのカバー演奏を残しています。

演奏スタイルはタッピング奏法をメインにしているというよりは、「効果的に取り入れている」という感じです。

ただ、オリジナル曲の『The Perc-U-Lator』はタッピング奏法を取り入れた作品で、海外ではジャスティン・キングの『Phunkdified』に次いで良く演奏される曲です。

次に紹介するベン・ラップスというYoutuberもレパートリーに入れています。

したがって、ここに紹介させていただく事にしました。

ベン・ラップス(Ben Lapps)

ベン・ラップスは、いわゆるYoutuberです。

現時点でカバーのみ演奏しているものの、テクニックがしっかりしています。

ジャスティン・キングの動画のコメントに「ベン・ラップスの方が演奏力が上だ」と書かれていましたが、確かに、この曲が音大のテストの課題曲だとしたら、ベン・ラップスの方が点数を取るでしょう。

しかし、本家ジャスティン・キングの魅力はテクニックよりもマッチョイズム的な部分にあります。

オリジナルの持つあの「ワイルドさ」は、彼のような「おりこうさん」には出せません。

ベン・ラップスさんはジャスティン・キングを目指すよりも、マイケル・ヘッジスのような知的路線の方が合ってるかも知れません。

まあ、ヘッジス路線ではYoutubeで再生数取れないという、戦略的な部分もあるのかもしれませんが。

それにしても新鋭のタッピング系はジャスティンキングのフォロワーが多いようで、だいたい皆、『Phunkdified』を演奏しています。

『Phunkdified』は宴会の余興や、一発芸にはちょうど良い楽曲ですが、はっきり言って「ダサい曲」の部類で、「この曲を選曲するセンスってどうなの?」と思いましたが、ベン・ラップスはまだ子どもで、大人になってオリジナルを作り始めれば化けそうなので、先行投資の意味でも紹介しておきます。

タッピング奏法の天才ギター少年の映画『奇跡のシンフォニー』

『奇跡のシンフォニー』は孤児院で暮らす少年が、生き別れになった両親を探して旅立つ物語です。

ある時、埃をかぶったギターを見つけ、試しに弾いてみたところ、天才的な才能を覚醒させます。

その演奏スタイルは、タッピング奏法で、曲調はマイケル・ヘッジスのような桃源郷系です。

主役を演じたフレディ・ハイモアくんも、役を演じる上でマイケル・ヘッジスを意識したと語っていました。

「音楽の天才が誰からも教わらず、ギターを弾く」というシチュエーションと「タッピング奏法」の相性は驚くほど良く、この映画は「タッピング奏法」の神秘性を巧みに描いた作品といえます。

劇中で登場するギターの曲はこの記事でも紹介したカーキ・キングさんが提供したものです。

タッピング奏法に興味のある人は見たほうが良いでしょう。

ただ、ほとんどヒットしなかったマイナーな映画の為、現時点ではPrime Videoなどの動画配信サービスには上がっていないようなので、DVDかプルーレイで見るしかありません。

隠れた名作です。

奇跡のシンフォニー(August Rush)

2007年・アメリカ
監督:カーステン・シェリダン
脚本:ニック・キャッスル / ジェームス・V・ハート
出演:フレディ・ハイモア / ケリー・ラッセル / ジョナサン・リース=マイヤーズ
音楽:ハンス・ジマー / マーク・マンシーナ
ギター:カーキ・キング
上映時間:114分

奇跡のシンフォニー